和食の旨味といえば、まずかつお節が思い出されます。今回は、枕崎で伝統的な製法を継承するかつお節生産者家族を訪ねてきました。
かつお節の原料となるカツオは近年、南洋での巻き網漁の冷凍物が大半を占めていますが、こちらの生産者さんは近海の一本釣り物にこだわっています。そこには科学的な理由があるのです。
巻き網漁では、捕獲されたカツオは網の中で暴れてから死にます。そのため死んだ後にうま味成分に変わる体内のエネルギー物質ATPが消費されて減り、更に乳酸が発生して酸味が増してしまいます。
その伝統的製法のかつお節は気の遠くなるような工程を経て丁寧につくられています。1)一本釣り鰹を丁寧に解凍 2)3種類の包丁を駆使して節に切る 3)大釜で2時間ほど煮る 4)骨を抜く 5)骨抜きの部分をすり身で埋める 6)焙乾する 7)水分を均一化する 8)表面を削り滑らかにする 9)天日で干す 10)カビ付けして保存性を上げる(旨味も増す)
6ヵ月間にも及ぶ丁寧な工程を経てから、かつお節はようやく消費者に届けられるのです。東京や大阪の老舗料亭がこの芸術品を待ち遠しくしていることに納得しました。